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ALICE 実験のためのPHOS性能評価機の開発研究

宇宙の始まりと言われるビックバン直後、わずか数十万分の一秒の間、宇 宙はクォークやクォークの糊付けの役割をしていたグルーオンが自由に飛び 回る状態であり、現在の宇宙とは全く異なる物質状態であった。この物質状 態はクォークグルーオン・プラズマ( QGP )と呼ばれる。現在、私達の日常 世界においては、クォークは核子内に閉じ込められているが、高エネルギー 重イオン衝突によってその閉じ込めが破れ、 QGP 相に相転移すると期待され ている。 2008 年 9 月より欧州原子核研究機構( CERN )において大型ハドロン衝突 型加速器( LHC )が稼動した。 LHC では、標準モデル理論が予言する「...

Descripción completa

Detalles Bibliográficos
Autor principal: Maruyama, Yuu
Lenguaje:jpn
Publicado: 2017
Acceso en línea:http://cds.cern.ch/record/2244922
Descripción
Sumario:宇宙の始まりと言われるビックバン直後、わずか数十万分の一秒の間、宇 宙はクォークやクォークの糊付けの役割をしていたグルーオンが自由に飛び 回る状態であり、現在の宇宙とは全く異なる物質状態であった。この物質状 態はクォークグルーオン・プラズマ( QGP )と呼ばれる。現在、私達の日常 世界においては、クォークは核子内に閉じ込められているが、高エネルギー 重イオン衝突によってその閉じ込めが破れ、 QGP 相に相転移すると期待され ている。 2008 年 9 月より欧州原子核研究機構( CERN )において大型ハドロン衝突 型加速器( LHC )が稼動した。 LHC では、標準モデル理論が予言する「ヒッ グス粒子」の発見、及び QGP の探求を目的とした実験が同時に稼動する。 LHC で行われる実験の中で、高エネルギー重イオン衝突実験( ALICE )は唯 一 QGP 探求を目的とした実験である。 ALICE 実験が備える電磁カロリメー タの一つである高性能光子検出器( PHOS )は QGP 相から熱輻射で発生する 熱光子のエネルギー測定を目的として開発されており、光子のエネルギー分 解能及び位置分解能の双方に世界最高分解能を実現する。検出素子は鉛タン グステン酸( PbWO 4 )結晶とわが国の最先端技術を誇るアバランシェ・フォ トダイオード( APD )光学素子から構成される。 本研究では、 PHOS の更なる研究開発を目的として PHOS 性能評価機を 広島の実験室に構築した。そして、広島大学内の放射光施設電子周回装置 ( REFER )における 150MeV 電子ビームを用いて、性能評価機のエネルギー 分解能を求めた。その結果、性能評価機の 150MeV でのエネルギー分解能 /E は 20.7 ± 1.3 (系統誤差) ± 1.3 (統計誤差) % であった。この結果は図 1 のエ ネルギー分布より求めた。今回のテスト実験で測定したエネルギー分解能は、 現在までに行われた PHOS 性能評価実験の結果から期待される値と誤差の範 囲内で一致する。(図 2 参照)よって、性能評価機は PHOS とほぼ同等の性能 を有する事が証明された。この結果より、現在この性能評価機を用いて、時 間分解能の測定、電磁シャワーの深度の測定などの PHOS の更なる研究を進 行している